投稿者: タベアルキスト(Tabearukist Association) 12 Jul 2017

「美食旅」~島根県 高津川編~

「美食旅」~島根県 高津川編~ © TABEARUKIST ASSOCIATION

水質日本一とも言われる清流「高津川」

高津川は、島根県を流れる全長81kmの一級河川です。広島県境の吉賀町から津和野町日原(にちはら)を経て、益田(ますだ)市の日本海に注いでいます。水源は樹齢1,000年を超す巨樹の根元に湧く泉「大蛇ケ池」。勘の良い人は気付いたかもしれませんが、池の名前は日本神話に由来し、素戔男尊(スサノオノミコト)に討たれた八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の魂が宿っていると言う伝承があります。神話の国・島根らしいエピソードですね。

また、高津川は国土交通省の水質調査で「清流日本一」に複数回選ばれており、一級河川でありながらダムの無い、日本では珍しい川です。水質が良い=水が澄んでいる事の恩恵を受け、高津川で獲れる鮎は日本有数の味わいとされており、全国を食べ歩いている食通からの評価も非常に高い次第です。また、河口で獲れる大型の天然本ハマグリ「鴨島蛤」も格別の味わいを持っています。山や木々の恵みをたたえた清流、それが高津川です。

香り高き「高津川の鮎」

古来より日本人に愛されてきた魚、鮎。鮎は秋に孵化し、川の流れに乗って海へと旅立ち、プランクトンなどを食べて成長した後、3月から4月頃に川へ戻ってきます。そして、川では岩に生える苔を主食として成長します。苔は川の水質や流れによって状態が大きく変化します。よって、川の水質を如実に表す苔を主食とする鮎は、川によって味わいを大きく変える「川の環境を映す魚」となります。具体的に言うと、鮎の魅力として挙げられる「香り」に加えて、「旨味」や「食感(身質)」も川によって大きく異なります。その中で、高津川の鮎は極めて香り高く、それでいて強い旨味も有していると言われています。

高津川はダムがない川なので、森林から流れ出る清流が保たれ、良質な苔が育つ事が一因です。通な方は高津川でも本流と支流でその味に違いがあり、本流は旨味が強い点が特徴で、支流の匹見川の方は香りがよりさっぱりしているとの評価です。

高津川の鮎の魅力を漁協の方に聞く

高津川漁協は漁師さんから鮎を買い取り、漁師さんの代わりに全国に販売しています。島根県内のみならず関東とも取引しており、築地(の仲卸)は勿論、東京や神奈川の料理店とも直接取り引きしているとの事。我々が取材に伺った際にも、朝に獲れた鮎たちが全国に発送しているところでした。

高津川の鮎は6月上旬に解禁され、10月中には禁漁にしているとの事。子持ちの鮎、いわゆる「落ち鮎」は資源保護の観点によりあまり獲られる事が無いそうです。しかし、残念な事に漁獲量は年々下がっており、組合の取扱量として、10年前は15トンあったところ、平成22年頃から7〜8トンに下がり、平成25年の水害のあとは約2~3トンまでに減っているそうです。理由としては、鮪のような乱獲ではなく、自然災害による影響が最も大きいそうで、近年の気候変動は頭が痛いところです。いただける時には、自然の恩恵と漁師さんへの敬意を持っていただきたいところです。

高津川の鮎のお土産

高津川漁協では鮎の加工食品も作られています。代表的な製品は鮎の肝を用いた「うるか」。道の駅「シルクウェイにちはら」や萩・石見空港で販売されており、こちらのエリアを巡っていると目に触れる機会が多いはず。

旨さの秘訣はズバリ、時間と手間。フレッシュな天然モノを大量に用い、カメで3年間熟成して作っているそうです。熟成による旨味成分の変化を科学的に調べたところ、3年以降にアミノ酸が増加し、5年程で天井に到達し、3年あたりが良いとのことで製品化されたとの事です。「うるか」だけでなく「子うるか」も美味しいので、合わせていただくと楽しいかと思います。また、界隈では甘露煮はあまり作らず、むしろ一夜干しや鮎鮓などシンプルな料理で食す事が多いそう。そして、お正月の雑煮は鮎出汁との事で、いただいてみたくなりました。高津川漁協謹製の食品は、東京の「にほんばし島根館」でも入手出来ます。東京にお住まいの方は、是非!

夏の味覚「高津川の鮎」を美加登家でいただく

こちらは高津川で鮎料理と言えば、真っ先に名前が挙がる名店です。鮎は高津川本流で獲れたものに絞り、さらに日原から横田あたりまでのエリアに限定して仕入れているそう。高津川の鮎の中でも、厳選されたものを頂けます。元々は料理旅館であったため建物は趣深く、ひとたび腰を下ろすと非日常的な雰囲気に満たされてゆきます。

女将さん、若女将の接客もきめ細かく、心地良く御料理を楽しむ事が出来ます。鮎シーズンのコース料理は基本的に鮎のみで構成されており、余すところなく鮎を満喫出来ます。

定番の【鮎の背ごし】や【鮎の塩焼き】は定番の調理であるが故に、高津川の鮎の素晴らしさをダイレクトに伝えてくれます。そして、【鮎の清汁仕立て】や【うるか茄子】など創作的な御料理に鮎の奥深さを再認識し、締めの【鮎めし】では、たっぷりの鮎にお腹も心も満たされて至福のままにコースを終えます。わざわざ足を運ぶ価値のある、唯一無二のお店だと感じました。尚、鮎以外のシーズンには天然のスッポンや河豚のコースを供されておられ、ツガニや島根県産の松茸もいただけます。

美加登家で提供される鮎料理

【鮎の背ごし】

鮎のお造りと言えば、矢張り背ごし。高津川の厳選鮎を用いた背ごしは、高貴とも言える素晴らしい香りを楽しませてくれます。そして、旨味、甘みが幾度となく届き、軽い苦味がキリッと引き締めてくれます。しかし、余韻から逃れる事は出来ません。一度口に運べば、ひたすら幸福な余韻に包まれます。

【鮎の塩焼き】

鮎の塩焼きは素材の良さのみならず、焼きの技術に味が大きく左右されます。料理人の経験とセンスが特に物を言う魚です。美加登家さんの塩焼きは完璧とも言える振り塩と焼き方であり、頭から尻尾までリズミカルにいただけます。頭はカリッと、皮はパリッと、身はホロホロしっとりに焼き上げている。塩焼きのイメージが変わる事かと思います。

【鮎めし】

極上の鮎をたっぷりと楽しませていただいた後、これでもか!と喜びの追い打ちをかけてくれるのが、こちらの鮎めしです。米粒は一粒一粒に鮎の旨味をまとっており、コースの最後まで香りを楽しませてくれる秀逸な締めものです。鮎は丁寧に骨が取り除かれており、味付けのみならず調理も繊細です。


タベアルキスト / Tabearukist Association

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タベアルキストは年間約300軒以上の外食をする食べ歩きマニアの集団「Tabearukist Association」に所属するメンバーです。タベアルキストの考える「食べ歩き」とは、幾つかのお店を巡り、わざわざ食べに行く価値のある逸品を食べまくることです。またタベアルキストは時にライターとして、日本全国にある魅力的な「食」の情報を実際に取材し、客観的な視点で発信していきます。


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