投稿者: タベアルキスト(Tabearukist Association) 21 Jul 2016

商品誕生のルーツ・生産者の顔に迫る ~鹿児島県志布志市~

商品誕生のルーツ・生産者の顔に迫る ~鹿児島県志布志市~

鹿児島空港から1時間半ほど車を走らせれば、のどかな田園地帯に養鰻場のビニールハウスが目に飛び込んでくる。

養鰻場は5箇所あり、稚魚用の元池38面、成鰻用の外池131面の総池面数は169面で、敷地内は全面がコンクリートで舗装されている。養殖池の床面は地域によって異なり、鹿児島はコンクリート、三河一色、宮崎では、土もしくは砂利が敷き詰められている。全面コンクリートにすることで、鰻が土をかまない。それにより、鰻が泥臭くならない。それができるのは、豊富な地下水の恵みがあるがゆえ。

成鰻用池には、独特の甘い香りが漂う。

ひと池は100坪で水量は約400トン、水深は1.2m。使用する大量の水は、地下約70mより汲みあげる地下水を使用し、場内各所にボーリングが施されている。最新設備として、酸素溶解装置を1年前から導入するなど、設備の進化にも余念がない。

鰻は、最初は10万尾、最終的には3万~3万5千尾と成長に応じて鰻の数を変えていくという。その結果、現在では年間800トンの鰻製品を出荷する日本最大級の養鰻場にまで成長している。

網カゴの中には元気の良いたくさんの鰻が入っていた。

エサは、朝夕2回。魚粉ベースにカプサイシンやウコンなどを配合し与えている。最近は、肉を柔らかくする理由でパイナップル酵素を加えるなど、経過を試して常に最新のエサを調合している。

鰻は餌や住んでいる環境によって味が大きく異なり、個体差が激しい生物。よくエサを食べる鰻と、あまりエサを食べない鰻をグループ分けし、同じ力の鰻に分けて育てることで、鰻の質を一律化している。

鰻師は、約40日間で鰻の性質を見抜くという。

養殖池169面を、コンピュータ制御により24時間集中管理し、水温は年間を通して30℃に保たれている。

鹿児島では、鰻の養殖がスタートした40年以上前からこのようなコンピュータ制御のシステムで管理しているというが、他の地域ではこのような管理は行っていない。トラブルがあれば、警報が鳴り鰻師宛てに緊急メールが飛び、電気が止まった時には、自家発電で管理している。

尚、各養殖場のリーダーは、各養殖場に住居を構え、家族と共にそこで暮らして24時間鰻と共に生活している。機械では対応しきれない最終的な判断は、やはり鰻師の感性と情熱に委ねられている。

鰻の保管と生処理のこだわり

搬入された活鰻は、人がそのまま飲めるきれいな地下水で、立ザルに入れたまま48時間さらされる。

一度ザルを通した水は全て排水し、常にきれいな地下水で体内と体表を洗う。きれいな地下水をかけ流すことで、体内浄化や臭み抜きにつながる。こちらの地下水は、殺菌しないでもそのまま飲めるまろやかでおいしい軟水だ。

鰻師が無投薬にこだわり、わが子のように育て上げた活鰻とご対面。

1尾は250gほど。成育優良で緑系、頭が小さい狭頭形で口が小さく、肥満度が高い印象。色艶も申し分ない。

活鰻は、割く前に氷水を使って仮死状態に。締めに使う水や氷も、もちろん地下水を使っている。理由は、電気を使って締めると瞬時に死んで血流が止まるため、鮮度が落ちてしまうから。鮮度が落ちると焼いても細胞が縮まなくなるため焼き上がりの形に影響する。

割き場では常時10~20人の割き手が鰻を背開きにして肝や骨に分けていく。こちらでは基本として有頭背開きにし、1尾ずつ丁寧に頭部の形や焼き上がりの美しさにも注意して捌いている。

割き手はなぜか女性の職人が多い。理由は、女性は腰を使ってあまり力をかけずに繊細に仕事をするので、割き手に向いているからだ。

鰻の焼きのこだわり

加工場内は、純度の濃い鰻を焼く誘惑の香りが漂う。まるで、何軒もの鰻屋が鰻を一斉に焼いているようだ。また、焼きから瞬間冷凍し出荷できる最先端のラインは圧巻の一言。

焼きは、ガス焼き・炭火焼・電気焼きを各工程にバランスよく採用。焼きへのこだわりを信念に、鰻の特徴を熟知した方法で徹底的に焼き上げる。

最初に、上が強火・下が弱火の二段構造のガス焼きで一気に焼いていく。皮目の方をしっかり焼くことで鰻の生臭さを消している。

次に、炭火焼で鰻の余分な水分や脂分を飛ばし鰻の旨味を凝縮。最後に電気焼きで、脂がはじけるくらいしっかり焼いていく。電気焼きをすることで、焼きムラを防ぐ効果があるという。そして、7分30秒蒸していく。

蒲焼きでは、ローラーによる合計4回の「タレつけ」と「焼き」を交互に繰り返し、しっかりと焼き込みをする。

1回目から3回目までは同じ焼きタレの槽を通り、3回目の焼きで丼屋の仕上がりに。また、30分に1回タレの糖度と温度を測定し、味にバラつきがでないよう調整。4回目で、焼きタレよりもやや糖度と粘度が高い化粧タレの槽を通ることで艶が出て、香ばしく焼き上がり、商品が完成する。

活鰻を捌いてから商品になるまで約1時間20分、様々な技の巧みさに魅了された。

こだわりの鰻弁当

一見、ギフトにもいいかもと思える、パッケージにもこだわりを感じる冷凍鰻弁当。600Wの電子レンジで5分加熱し3分蒸らせば、手軽にこのビジュアルの蒲焼を食すことができる、なんとも画期的な弁当である。

ご飯の上には、最良の環境と特別の飼料でじっくりと育てられた蒲焼がびっしりのっている。綺麗な飴色をした厚みある蒲焼は艶やかで、所々にある焦げ目が良いアクセント。蒲焼は鰻独特の泥臭さがなく、思っていた以上に身がふっくらした万人受けする正統派の味。

タレは、さっぱりかつ芳醇な味わい。また、少しかためで粘りがあるご飯が旨い。こだわりの米は、特許製法の熟成米である佐賀県唐津産「夢しずく」を使用。米を天然水で洗い、特製のタレと合わせて一釜ごとに丁寧に炊き上げられている。特製のタレを吸った米なので、蒲焼と見事に調和する。

見えないところにたくさんのこだわりのある、従来の冷凍の概念を覆す万人受けの味を突き詰めた画期的な冷凍鰻弁当だった。

山田専務と鰻師の加藤氏にお話を伺った

無投薬養殖で、1番苦労した点や気を遣っている点とは?

創業当時、鰻が全量死ぬことはなかったが、少したってAという病気が発生、Aという病気が治まったら、Bという病気が発生、Bという病気が治ったら、今度はCという病気が発生と、5年ぐらい試行錯誤しながらひとつひとつの作業を見直し、自分たちで考え、ルールを決めて実行してきたことですかね。鰻と向き合う時間を長くし、気を遣っています。鰻の泳ぎ方、エサの食べ方、水の色やにおいを真剣にみてればわかるんです。

職人的なこと以外は機械化し、無駄なことはしないでそこに注力できる環境を整えることですね。

無投薬養殖を辞めようと思ったことはありますか?

鰻が死んでいく姿をみて一瞬、無投薬を辞めようと思ったことがありましたよ。でも、社長が「全部死んでも会社はつぶれない」と言われたんですよね。

最も幸せを感じる瞬間とは?

やはり、お客さんから言われる「美味しい!」の一言や反応ですね。最後まで完結させるには、育てて焼いて営業して売ってお客様に手渡そうと。

また、この山田水産の仕事をいかに世の中にだすか、それが伝わった時が嬉しいですね。

なぜ養殖した鰻自体の卸をしないのか?

何度も専門店から卸をしたいという話はもらっていますよ。ただし、いざ取引になると、年間通して腰を据えてうちの鰻を売っていきたい方がいなくて…。

鰻師のネーミングはどのようについたのか?

日本酒の杜氏にかけて考えたんですよ。作る人の地位を上げるために、鰻師のブランドを作ったんです。

鰻師になるために一番必要なことは?

情熱ですよね。絶対的に旨いもの作るという。また、食べ物に興味ないと駄目ですね。食に興味があって現状に満足せずより良くしようという情熱ですね。

次のステージとは?目指すべきものとは?

簡単便利イコール美味しくないが、従来のイメージだと思うんですよ。簡単・便利・美味しくて・無投薬の4段活用は今までにないと思うので。お客様に気軽に食べてもらいたいですね。庶民の食べ物として。そして、冷蔵鰻と冷凍鰻に続いて今度は常温の鰻を展開するんですよ。温度帯を征するものは世界を征すると思ってますからね。

まとめ

養鰻場からはじまり加工場の隅々まで見学し、専務と鰻師に熱き想いを聞くことができた。

「鰻師は水にこだわり、鰻と寝食を共にし、鰻の気持ちを感じ、魂を込めて鰻を育てる。」
鰻師達は本当に、プライドをもち鰻の育成に人生をかけていた。

日本一を目指すために、今までにないものを作り出す意識が創業当初から鰻師達にあり挑んできたからこそ、「冷凍鰻重」という商品ができたのだろう。そして、他の地域が羨む飲めるほど旨い軟水を含めたこの環境全てが、生み出した賜物といえる。

鰻は謎が多く、まだまだ未開な生物で、一番手が付けられていない食材だ。

「温度帯を征するものは世界を征する」

山田専務のこの一言が、食材としての鰻の新たな可能性を広げてくれるのかもしれない。

取材協力:山田水産株式会社 有明事務所

〒899-7402
鹿児島県志布志市有明町野井倉3581
TEL.099-474-2880 FAX.099-474-2780
HP: http://yamadasuisan.com/


タベアルキスト / Tabearukist Association

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タベアルキストは年間約300軒以上の外食をする食べ歩きマニアの集団「Tabearukist Association」に所属するメンバーです。タベアルキストの考える「食べ歩き」とは、幾つかのお店を巡り、わざわざ食べに行く価値のある逸品を食べまくることです。またタベアルキストは時にライターとして、日本全国にある魅力的な「食」の情報を実際に取材し、客観的な視点で発信していきます。


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